沖縄県公共交通活性化推進協議会 わった~バス党

バスの10年@沖縄〜進化と深化

「バスがかわる バスでかわる」を合言葉に掲げ、サービス改善と県民の利用を呼びかけることで、渋滞解消をはじめとする「快適な沖縄」の実現をめざす「わった〜バス党」の結成から10年。
2021年3月にバス党で実施したアンケートでは、利用者の2/3(65%)が「公共交通が使いやすくなった」と回答。また83%が「バスは自分たちの生活に役立っている」と評価をいただくようになりました。
改めてこの10年の路線バスの進化と深化の軌跡をふり返ってみました。

以前に比べて公共交通は使いやすくなりましたか
以前に比べて使いやすくなった点はどんなことですか

支払いがスマートに

交通系ICカード「OKICA」

2021年3月にバス党で実施したアンケートで、改善点のトップにあげられたのは「運賃の支払いやすさ」。県内初の交通系ICカード「OKICA」導入によるもので、小銭の用意や両替の手間がいらず、スムーズな乗り降りが実現。乗降時間の短縮にもつながっています。
2014年にモノレール、2015年にはバスでの利用がスタート、2021年6月末には発行枚数が45万枚を突破しました。現在ではカーシェアでも利用できるほか、2021年8月からは買い物やタクシーでの利用も開始されました。チャージ場所も拡充し、ますます使い勝手の向上が期待されます。

OKICA発行枚数推移
※9月末時点
OKICAについて詳しくはこちら https://info.okica.jp/

乗り降りがスムーズに

ノンステップバス

スムーズな乗降という点では、お年寄りや障がいのある方、小さなお子さまにも優しい「ノンステップバス」も導入が進みました。2012年3月末ではわずか9台だったのが、県での導入補助もあり2020年には318台と大きく増加。環境性能にも優れていて、CO2排出削減対策にも貢献しています。

県内のノンステップバス導入推移
国土交通省資料より作成

安心してバス待ちできる環境に

グレードアップバス停

グレードアップされたバス停が増加中です。雨や強い日差しを避けてバス待ちができる屋根や照明、ベンチの設置も増えました。2020年までに基幹区間の全てのバス停のグレードアップを完了しました(施工不可能個所除く)。なお比嘉西原(那覇向け)・農林中金前(沖縄市向け)の2ヵ所のバス停は、電光表示もある高機能バス停として整備されています。比嘉西原バス停には暑さ対策でミスト噴射機能もあります。

路線バス検索サイト「のりものナビOkinawa」

2013年より、路線バス検索サイト「のりものNAVI 沖縄(旧バスなび沖縄)」がスタート。路線バスの乗換検索、接近情報、運行情報などを手持ちのスマホなどで検索確認できるようになり、バス待ちのストレスが緩和しました。2020年にはモノレールやタクシーとの乗り継ぎ検索も可能になり、さらに便利になりました。また公共交通機関の時刻表やバス停位置情報などがオープンデータ化されたことにより、グーグルマップを始めとした大手検索サイトでの公共交通の乗り換え検索も実現しています。

のりものナビはこちら https://www.busnavi-okinawa.com/top

路線案内がわかりやすく

系統別カラーリング

多くの路線が運行する国道58号基幹バスルート(久茂地〜伊佐)では、どのバスに乗ればいいかがわかりにくい状況が続いていたため、大謝名方面をグリーン、伊佐方面をピンク、北谷方面をブルーに色分けし表記も大きく見やすくして、電光表示とバス停の路線図に表示しています。

車内サイネージ

海外から沖縄を訪れる外国人観光客の増加にも対応して、路線バス車内に英語・中国語・韓国語などの多言語によるデジタルサイネージ(液晶ディスプレイ)案内を行なっています。2021年3月までに合計607台導入されました。

運行時間が改善

バスレーン延長

バス党で2021年3月に実施したアンケートでは、運行遅延の改善や所要時間の短縮など「運行時間の改善」についても評価されています。
道路整備や交差点改良などの対策に加え、交通が集中する朝夕の国道58号では、久茂地〜伊佐間でバスレーンが延長。その結果、那覇市久茂地〜宜野湾市伊佐間の移動時間は、朝が48分から44分に約4分、夕方は53分から44分と約9分、短縮されました。バスレーンは今後も伊佐からコザへ段階的にさらなる延長を計画中です。
利用者の半数(51%)からは「概ね遅れずに運行している」との評価をいただいておりますが、沖縄の朝夕の渋滞は全国ワーストレベル。渋滞時の交通量が1割減るだけで、所要時間は大幅減につながるというデータもあります。そのためにも時差出勤や、自家用車から公共交通・自転車等への利用転換などの協力をお願いいたします。

バスレーンについて詳しくは /buslane/

PTPS(公共車両優先システム)

国道58号の運行改善には、デジタルの力も一役買っています。路線バスが信号をスムーズに通過できるよう、信号の操作などを行う「公共車両優先システム(PTPS)」が2016年度より導入されました。

乗務員マナーが改善

マナー講習

バス党アンケートで改善が進んだ点として第3位にあげられたのは「乗務員のマナー向上」。かつては「沖縄のバスは手をあげないと止まらない」などと揶揄されたこともありますが、各バス会社では定期的な研修において、安全教育とともにマナー教育にも力を入れています。乗降時の挨拶や路線案内アナウンス、安全確保のための声かけなど、お褒めの言葉をいただくことも増えましたが、まだまだお叱りを受けることもあります。お客さまに少しでも気持ちよくバスに乗っていただけるよう、各バス会社でさらなる改善に取り組んで行きたいと思います。

安全安心な運行への取り組み

日常点検
安全講習

日々の運行前の健康・アルコールチェックや車両点検のほか、乗務員向けには定期的な研修や講習会、街頭指導、健康診断など、車両も定期的に整備を行うなど、各バス会社とも安全・安心・快適なサービス提供に向けての取り組みを行っています。近年ではバス停での安全確保対策や車内での乗客の転倒事故防止に向けての車内アナウンスなども強化しています。
また新型コロナ感染防止に向けても、日本バス協会などが定めたガイドラインに沿って、乗務員の体調管理、マスク着用、車内の消毒や換気、さらには従業員のワクチン接種なども進めています。

通勤・通学を支える路線の拡充

基幹急行バス

道路状況や利用状況に合わせて、各バス会社でもこまめに運行ダイヤやルートの見直しを進めています。残念ながら減便や運行休止になった路線もありますが、新たなニーズに合わせ新設された路線もあります。
通勤・通学で多くの方が移動する那覇〜コザ間には、実証実験を経て、2019年9月から「基幹急行バス」が運行を開始しました。軌道系交通システムなみの輸送力、走行性、快適性を備える移動をめざす「基幹バスシステム構想」実現に向けた取り組みの一環です。那覇〜コザ間を約60分で結び、特に利用の多い朝は最短6分間隔で運行します。
さらにWi-Fi、充電、到着予定時刻表示など快適な通勤環境を整えた、主要通勤ルートを結ぶ「通勤ライナー」実験や自動運転など、快適な通勤実現に向けての模索も始まっています。

基幹急行バスについて詳しくはこちら /express/

モノレールと結節する路線の新設

モノレールてだこ浦西駅と沖縄国際大学や琉球大学、付属小中学校を結ぶ「キャンパスバス」が2021年1月から運行を開始しました。4月からはてだこ浦西駅から西原高校・サンエー西原シティ・西原町役場に向かう「西原てだこ線」、首里駅から開邦中・高前を通る「首里循環線」など、モノレールと結節する路線を新設することで、通学時の移動手段の選択肢が広がっています。

通学バスなび

バスを利用しやすいよう、バスマップや運行情報を知らせる「通学バスなび」など案内ツールの整備も進んでいます。また、家庭の経済環境に関わらず学生が安心して教育を受けられるよう、ひとり親世帯や住民税所得割非課税世帯などを対象とした「バス・モノレール通学費無料化」などの支援策もスタートしています。

通学バスなびはこちら https://www.shimatate.org/try-bus/bus/

地域やお出かけを支える路線の拡充

コミュニティバス「Nバス(南城市)」
コミュニティバス「沖縄市循環バス(沖縄市)」

各市町村では地域を支える足として、コミュニティバスが増えてきました。公共交通の空白・不便地域の解消や住民や観光客移動手段の確保を目的に2021年現在、本島内では実証実験中も含めて13市町村で導入されています。南城市のNバスや沖縄市循環バス、読谷村の鳳バスなどの路線型のほか、浦添市のうらちゃんminiなど予約制のデマンド型といったタイプがあります。

パルコシティシャトルバス
沖縄エアポートシャトル
やんばる急行バス

レジャーや買い物の足も増えました。この10年、 沖縄は日本を代表するリゾート地として多くの観光客が来訪、リゾートホテルや大型ショッピングモールなど魅力的なスポットが数々誕生しました。この動きに呼応して、観光地やショッピングモールへのシャトルバスの運行も増えています。

楽しいバス

「牧志新都心線」
「夢バス」
「そらとぶピカチュウプロジェクトバス」

沖縄にはさまざまなラッピングを施したバスが数多く運行しており、街ゆく人の目を楽しませています。
先にご紹介しているコミュニティバスでは、各地域でユニークなイラストをあしらった車両が運行。那覇市内を走る「牧志新都心線」もクレバス画家アリカワコウヘイさんの作品をあしらったポップなデザインが人気です。通常の路線バスでは期間限定のラッピングも多く、子供たちが「あったらいいな」と描いたバスをあしらった「夢バス」、保育園児が描いた絵画を掲示した「母の日バス」、高校生が企画した「平成アルバムバス」、子供たちに人気のキャラクター・ポケモンをラッピングした「そらとぶピカチュウプロジェクトバス」などが運行中です。乗り物の楽しさ、ワクワク感を通して、多くの方にバスに親しみを持ってもらえればと思います。

これからのバスの課題

課題1:バス利用・活用機会の拡大

これまでお伝えしてきたバスの利用環境を改善するさまざまな取り組みにより、近年、バス利用者数の減少は下げ止まってきましたが、依然として横ばいで推移しています。一方で、県民に加え、観光客のレンタカー利用も加わり、クルマの増加は続いています。
このままでは、全国ワーストレベルの交通渋滞、CO2排出などの環境負荷といった問題は解消されず、また、このままバス利用者が増えなければ、バス事業者の経営環境は厳しくなり、バスの運行維持に支障をきたしかねず、クルマを使えない高齢者や子どもなど交通弱者の移動が困難になります。
みんなでクルマの使い方を見直し、多くの人が一度に移動できる公共交通の利用・活用機会を増やしていくことが望まれています。

課題2:運転手不足の解消

運行の担い手である運転手は全国的に減少が続いており、沖縄県も同様の状況です。バスの運転手になるには大型2種免許の取得が必要ですが、その取得者が近年減っていること、また賃金や勤務形態といった待遇面の課題、高齢化などが運転手不足の主な要因とされています。
もちろんバス会社でも運転手不足解消に向け、若年層や女性層が働きやすい職場環境・待遇の改善や免許取得支援などの取り組みも行っていますが、現状では採用人数と同程度の退職者が発生しており、ダイヤ維持に必要な人数を満たせない状況です。若年層の応募も少なく、再雇用者も含めて運転手の7割が50代以上となっており、高齢化が進んでいます。
運転手不足が要因の一つとなり、令和元年度には本島内の路線バスで大幅な減便が発生しました。自動運転の実用化にはもう少し時間を要するとの見方もあり、公共交通の維持のためには、運転手不足の解消は喫緊の課題となっています。

わった〜バス党では、こうした課題も踏まえた上で、公共交通機関がさらに利用しやすくなるような取り組みを引き続き行ってまいります。

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